隣地使用権の内容に関する規律
不動産法不動産管理掘削同意民法法律裁判手続隣地利用現行民法209条1項本文は、「土地の所有者は、境界又はその付近において障壁又は建物を築造し又は修繕するため必要な範囲内で、隣地の使用を請求することができる。」と定めています。
しかし、「隣地の使用を請求することができる」とは具体的に何ができるのかが明確でなく、とりわけ隣地所有者が所在不明である場合の対応が難しくなっていました。そこで、改正法では、隣地使用権の内容に関する規律が整備されました。
まず、改正民法209条1項は、土地の所有者が、所定の目的のために必要な範囲内で、隣地を使用する権利を有する旨を明確化しました。
そのため、個別事例によりますが、隣地所有者が所在不明である場合には、土地の所有者は裁判を経ることなく適法に隣地を使用することができると考えられています。
他方で、隣地使用権があるとしても、使用を拒まれた場合等には、妨害排除の判決を求める必要があります。
また、改正民法209条2項は、隣地所有者・隣地使用者の利益についての配慮を求めています。
そこでは、隣地使用の日時・場所・方法について、隣地所有者及び隣地使用者の損害が最も少ない方法を選ばなければなりません。
さらに、改正民法209条3項は、隣地使用に際しての通知に関するルールについて整備しています。
本条によると、原則、隣地使用に関しては、あらかじめ、その目的・日時・場所・方法を隣地所有者・隣地使用者に通知する必要があります。
ここでいう「あらかじめ」とは、通知の相手方が準備をするに足りる合理的な期間を置くことを言い、通常は2週間程度であるとされています。
ただし、例外として、あらかじめ通知することが困難なときは、隣地使用開始後に、遅滞なく通知することで足ります。
「あらかじめ通知することが困難なとき」とは、急迫の事情がある場合や隣地所有者が不特定または所在不明である場合が挙げられます。
隣地所有者が不特定または所在不明である場合には、隣地所有者が特定され、その所在が判明した後に遅滞なく通知することで足ります。
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